第2回 どうして版画作品には「限定番号」がいるのでしょうか?

どうして版画作品には限定番号がいるのでしょうか?

という素朴な疑問にせまってみよう.一時期は版画ブームみたいなものがあって,500エディションとかザラで1000なんて分母も存在しました,おまけに同じ作品で英数字バージョンのエディション,ローマ数字表記バージョンなど,ありとあらゆる数字が使われていたりもしました.でも,それは作家が意図したものではなく,ほとんどが版画を販売する業者さんたちが行ったものと思っています.というか実際そうです.このタイプは昨日の版画って?で書いたエスタンプ版画に限りなく近いものだと思います.私も昔,日本画の巨匠やハワイの作家などの作品の原画から版画作品を作るという事に立ち会ったことがありますが,作家のみなさんはみんな枚数とか値段とかにあまり頓着しない方が多かった気がします.ピカソが言いました「自分の作品がある一定の人に飾ってもらえるのも嬉しいけれど,版画を作ることによって世界中の人に飾ってもらえるのなら,もっと嬉しい」と.だからこそ限定部数といった規制を設けることで版画作品の真正を扱う側としても大切にしたいと思います.

限定番号/限定部数

限定部数(エディション)
限定部数(エディション)

オリジナル版画の版には物理的な刷りの限界があり、作品の限定部数(エディション)は技法・版画家の意図などを考慮して決定されます。試し刷りや作家の保存用などの他に刷られた総数を分母として、5/20というように記します。普通は作家の署名、タイトルとともに鉛筆で作品の下部に書かれます。この番号(エディション・ナンバー)は刷りだされた順序や作品の質とは全く関係ありません。作家は必ずしも限定部数を一度に全部刷らずに、その数の中から後から刷り足すこともあります。その中から作家が作品として認め作品のみを選んで限定枚数の分母の数にします。分母が50だからといって、50枚しか刷らない訳ではありません。

数字がない!謎の記号の正体,アーティスト・プルーフ

AP(アーティスト・プルーフ)
AP(アーティスト・プルーフ)

かつては作家が最終的な刷りに入る前の見本刷や校正刷のことを指していました。今日では限定部数(エディション)以外に、作家の権利として保有する一定数の版画で、慣例として5〜10%内に収められています。画面の外の左下にA.P(Artist Proofの略),E.A(Épreuve d’artiste<フランス語>の略)等と記入されます。

モノタイプ

非吸湿性の平坦なプラスティック、金属板、ガラス板などに直接描画したものを紙にあてて刷り取ったり、プレス機にかけたりして画像を転写する技法で『版』に安定性がなく基本的には1枚だけの作品です。

モノプリント

モノタイプとほとんど同義ですが『版』を用い複数印刷が可能なもので、あえて1枚しか制作されないものを指します。