テレビやなんかでも、例えば、エディションナンバーは若い番号の方がいいとかいうむちゃくちゃな事を平気で言ってる鑑◯団の人とかいるけど、笑っちゃう。
だから、SAGA版画展の期間中にちょっぴり版画ツウになれる、お勉強をしましょう。
1回目は「そもそも版画って?」から始めます。
オリジナル版画の定義
オリジナル版画とは「版を用いて表現された絵画」です。「版」を媒介することにより複数制作の可能性を持つ事が特性ですが、「複数」と「複製」には明確な違いがあります。
1960年のウィーン国際造形芸術会議の他、Print Council of Americaが1961年には「版画」の定義付けをしています。複製版画と区別し、美術品としての価値を確定させるために日本でも日本現代版画商協同組合が「オリジナル版画」を定義しています。それらを統合すると次の5点に集約されます。
- 版画を制作するという明確な意図のもとに、作家が下絵を描き(省略する場合もある)作家自身が木版・銅版・石版・孔版などに描刻したもの(自刻製版)
- 作家自身が手摺したり、プレス機で刷った作品、もしくは作家の監督下で職人が指示通りに刷った作品(摺刷)
- 作家自身もしくは職人による摺刷完了の後、作品を作家自身が確認したもの。
- 通常、完成作品の版画左下に限定番号、右下に自筆署名したもの
- 所定の限定部数を刷り終えた版には斜線か×印をいれる。また穴をうがつなどして、原版を廃版する。これをレイエ(rayer)という。
※日本現代版画商協同組合の定義には「ただし1930年以前に制作された版画には適用されない」という付帯事項があり、この頃が限定番号と作家のサインの記入が定着した時期と推測されます。
オリジナル版画とエスタンプ
オリジナル版画に対し「エスタンプ」(estampe)と呼ばれる版画があります。言葉の意味としては「版画」一般を総称するフランス語ですが、最近では「複製版画」を意味する世界共通語になっています。「エスタンプ」、油彩、水彩、素描など、すでにそれ自体がオリジナルな作品を原画として利用し、模写、模刻、写真製版により版をおこして、リトグラフやシルクスクリーン化したものです。刷りの行程も工房も職人ですが、作家が明確な意思と目的をもって制作したわけではない、二次的な作品ということになります。
版画だからタブローより価値が低いなんて事は全くないのです。
作品を発表する時に作家が選んだ表現方法の一つです。
鉛筆で描こうが、油絵の具で描こうが、水彩絵の具で描こうが、クレヨンで描こうが、出来上がった作品がその作家の意思で意図して作られたもので、見る側に何らかの心の動きを与えられれば、それは素晴らしい作品です。